なぜ横浜で?~宇都宮餃子祭り
『宇都宮餃子祭りin YOKOHAMA』が開催されている。2018年4月20日~22日
今年でもう5回目となる、横浜赤レンガ倉庫での春の恒例行事だ。
2017年には3日間で来場者数15.7万人にもなる一大イベントに成長した。
しかしなぜ、横浜で宇都宮餃子のイベントを毎年行うのだろうか?
宇都宮出身で、ついこの間まで神奈川に数年間住んでいた(Uターン組)という筆者の独自の視点から記事を書いてみたいと思う。
1.都越え
神奈川に移住して感じたことがある。それは「北関東のことをまるで知らない」
同じ関東地方なのに、北関東3県茨城・栃木・群馬についてほとんど知識がないことに衝撃を受けたものだ。
神奈川の人にとって、極端なことを言えば大正義・東京の向こう側は“未開の地”。
東京の先へ行くということは、かなりのエネルギーを要する大移動なのだ。
東京都を越える「都越え」という言葉の存在を初めて知った。(注:メジャーな言葉ではない)
しかし、そんな高い壁にも変化が生じる。
湘南新宿ラインが2001年、上野東京ラインが2015年に開通した。
東海道線の行き先が、「東京」表示だったのが「宇都宮」や「小金井」と表示されるようになったのだ。
ただの見知らぬ土地から“乗り換えなしで行ける場所”に大きくランクアップしたということになる。
電車で都心へ通勤通学してる人なら一度は考えたことがあるであろう。『このまま終点まで乗って行けたらな~』という妄想の場所が「宇都宮」となったのだ。
行き先が「東京」ではそうはならない。
余談ではあるが、時を同じくして栃木県民の「逗子」の知名度が上昇したことも付け加えておく。(湘南新宿ライン横須賀線直通の終着駅)
そこで、宇都宮餃子祭りin YOKOHAMA。
「赤レンガ倉庫に宇都宮餃子が来るらしい」
「電車で目にする行き先だけど行ったことはない」
「わざわざ行くには遠いが来てくれるなら食べてみよう」
というニーズにかなうイベントだったのだ。
そして、実際に餃子を食べて文化にふれることにより、“東京の先へ行く”という高いハードルを下げ、実際に宇都宮へ行ってみよう・・・というところまでPR戦略は成功している。
実際に、筆者の元職場の同僚で、宇都宮餃子祭りin YOKOHAMAがきっかけとなり宇都宮のファンになった人が存在するのだから間違いはない。
2.ゴールデンルートのその先へ
「ゴールデンルート」というのは訪日観光客が好む“東京・箱根・富士山・名古屋・京都・大阪”という日本の人気スポットを巡るルートのことである。
しかし外国人に限ったことではない、このルートつまり東海道は日本人にとっても大きな存在感を占めているのだ。人・モノ・観光どれを取っても、他の地域を上回る地位を築いてる大動脈だ。
そして「東京の人」にとってはこの神奈川県内の東海道、つまり横浜・鎌倉・湘南・箱根は手軽で身近な観光ルートとなる。
そうなると、極端なことを言ってしまうならば、東京から北は「ただの田舎」でしかない。
そこでゴールデンルート内、かつ東京に近い位置で、観光客向けに宇都宮餃子をPRすることに意義が発生する。
一例を上げてみよう。
餃子祭り会場の赤レンガ倉庫の最寄り駅(JR)
上野-桜木町間 約40分
また、さらに足を延ばすことをためらわない人ならば
上野-小田原間 約1時間20分(快速)
という観光ルートを楽しむ人も多いことであろう。
そしてプラスして箱根まで向かうというところであろうか。
そこで、ほぼ同じ時間をかけて北へ向かうならどうなるか?
上野-宇都宮間 約1時間30分(快速)
そう、宇都宮は案外遠くないということに気づくのである。
箱根よりも宇都宮は近いということを知らない人が多い。
つまりゴールデンルート内、横浜・鎌倉・湘南での観光を楽しむ人に向けて、その視点を北に向けてもらうという点でも赤レンガ倉庫での餃子祭り開催は大いにPR効果が期待できるのだ。
では、東京で餃子祭りを開催すればいいのでは?となりそうだが、そう単純なものではない。
一度、新宿・大久保で餃子祭りを開催したことがある。確かに人通りも多い場所で集客効果もあり大盛況だった。
しかし、それが宇都宮まで人を引き寄せる効果がどこまであったのか・・・というと疑問が残る。
要因はいろいろあるが、端的に言えば“期間限定の居酒屋”になってしまったのだ。多くの客は美味しい餃子とビールで満足して会場を去っていく。宇都宮そのものに興味を持つ可能性は低いと言わざるを得ない。
そう、観光PRというのは一過性では意味がない。○○は面白そうだ、その土地まで行ってみたい、ひいてはその土地のファンになりました。・・・というところまで到達してようやく観光戦略は成功したと言えるのだ。
きっと現在の宇都宮餃子の知名度ならば、全国どこで餃子祭りを開催してもそれなりの集客力が見込めると思う。しかし「来場者数○万人だから大成功」ではないのだ。
そこを宇都宮餃子会はよく分かってる。
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徐々にではあるが、“東京を越えた先”が遠くない存在になりつつある。
そして観光も、「みんなが行く場所」から「自分だけの場所」を好む傾向に変化しつつある。
独自の食文化の先駆者である宇都宮餃子のこれからが非常に楽しみだ。
長文にお付き合いいただきましてありがとうございました。
注:本文の内容は筆者の主観に基づくものです